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Q. 人工放射性核種は自然放射性核種より危険なのか?

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A. Yes。よくある誤解(3点)を解きながら詳しく見ていく。

人工放射性核種・自然放射性核種とは

 放射性核種とは、放射線を出す性質を持つ核種(原子核)を指す。具体的には、カリウム40・ヨウ素131・セシウム137などが挙げられる。

  • 人工放射性核種:核爆発・原子力発電所によって、人工的に生み出された放射性核種(ヨウ素131・セシウム137など)
  • 自然放射性核種:天然に存在する放射性核種(ウラン235・カリウム40など)

よくある誤解 その1

 Q. 「人工放射性核種」から出てくる放射線と、「自然放射性核種」から出てくる放射線は別物か?

 A. No。放射性核種によってエネルギーの差は多少あるが、出てくる放射線はα線もβ線もγ線も同じものである。では「人工放射性核種」は特に危険ではないのか? → その2に続く。

よくある誤解 その2

 「自然放射性核種」として、次の性質を持つカリウム40がある。確かに内部被曝も外部被曝も無視できない量だが、問題にされることはない。

 カリウム40(半減期 12.8億年)は天然に存在する代表的な放射能で、太陽系がつくられた時から存在している。

 食品中の濃度はかなり高く、白米、大根、ほうれん草、りんご、鶏むね肉およびかつお1kgに含まれるカリウムの重量は、それぞれ1.1、2.4、7.4、1.1、1.9および4.4gである(白米1kg中の放射能強度は33ベクレルに相当する)。

 体内に入ると、全身に広く分布する。カリウムは必須元素の一つである。成人の体内にある量は140g(放射能強度、4,000ベクレル)で、1日の摂取量は3.3gである。生物学的半減期は30日とされている。

 天然に存在する放射能として、内部被曝による線量が大きいものの一つと考えられる。内部被曝が重要で、10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.062ミリシーベルトである。体内に常に同じ量が存在するので、線量は計推定やすい。生殖腺や他の柔組織に対する年間線量は0.18ミリシーベルト、骨に対しては0.14ミリシーベルトである。

 ガンマ線による外部被曝も無視はできない。1㎏のカリウムから1mの距離における年間線量は0.0055ミリシーベルトであり、ふつうの場所での年間線量は0.01ミリシーベルトに達することもある。

出典:原子力資料情報室(CNIC) – カリウム-40

 Q. 「自然放射性核種」のカリウム40による被曝が問題にならないのならば、「人工放射性核種」も問題にならない?

 A. No。生物は進化の過程で、「自然放射性核種」のカリウム40を摂取しても同じだけ排出し、体内で濃縮されない仕組みを身につけてきた。従って被曝量も一定し、DNAの修復などで放射線の影響をなるべく受けないような仕組みが生物には備わっている。

 ところが「人工放射性核種」への防御は、進化の過程を経ていない。通常の栄養素と同様に体内に滞留し、特定の場所に濃縮してしまうのだ。たとえば人間の身体は、放射線を出すヨウ素131を、(甲状腺ホルモンを作るのに必要な)放射線を出さないヨウ素と同じように甲状腺や母乳に濃縮させる。他の「人工放射性核種」(ストロンチウム90やセシウム137など)でも、他の動物・植物でも、場所は異なるが、滞留(濃縮)する。

 滞留(濃縮)された場所では放射線が同じ場所で出続けるため、DNAの修復機能でも手に負えなくなる。また食物連鎖を経て、生物濃縮をも引き起こしてしまう。

 人がヨウ素を吸収する主な経路は、牧草→牛→牛乳→人の食物連鎖である。この移行はすみやかに進み、牛乳中の放射性ヨウ素濃度は牧草上に沈積した3日後にピークに達する。牧草から除去される有効半減期は約5日である。牧草地1m2にヨウ素-131が1,000ベクレル沈積すれば、牛乳1リットルに900ベクレルが含まれると推定されている。チェルノブイリ事故では、放出量が大きかったために、飲料水、空気などを通る経路も考える必要があった。

出典:原子力資料情報室(CNIC) – ヨウ素-131

 ストロンチウムはカルシウムと似た性質をもつ。化合物は水に溶けやすいものが多い。体内摂取されると、一部はすみやかに排泄されるが、かなりの部分は骨の無機質部分に取り込まれ、長く残留する。

出典:原子力資料情報室(CNIC) – ストロンチウム-90

 セシウムの化学的性質と体内摂取後の挙動は、生物にとって重要な元素であるカリウムと似ている。体内に入ると全身に分布し、約10%はすみやかに排泄され、残りは100日以上滞留する。

出典:原子力資料情報室(CNIC) – セシウム-134

市川定夫先生による解説

 上記その1、2は、微量放射線の遺伝的影響の研究で知られる市川定夫氏の解説を参考にした。

出典:【放射能】自然放射線と人工放射線のちがい / 市川定夫氏 – YouTube

 詳細は下記の動画を見てほしい。次のような話が非常に勉強になる。

  • 人工放射性核種が濃縮する理由と推移
  • 放射線で癌になる理由
  • 放射線で免疫が低下する理由
  • 放射線でアレルギーになる理由
  • 放射線による遺伝子の損傷が遺伝する可能性
  • 女性の方が放射線による遺伝的影響が大きい理由
  • 劣性の突然変異(遺伝)は数世代先にならないと判明しないこと

参考:放射能はいらない_1/4 – YouTube 12:40頃~。4/4まで続く

よくある誤解 その3

 Q. 日本の自然放射線量は大地にある「自然放射性核種」などの影響で、0.05~0.19μSv/hくらいある。関東が0.05μSv/h前後、花崗岩の多い広島・山口・愛媛周辺が0.11μSv/h前後となっている。福島原発事故後、「人工放射性核種」により関東で放射線量が上がったとしても0.11μSv/h前後であれば問題ない?

 A. No。2011年3月に、東日本で大気中の放射線量(空間線量)が上がったのは、福島原発から放出された「人工放射性核種」が大気中を舞ったからである。数日~数ヶ月経つうちに空間線量は次第に下がってきたが、これは雨や雪で「人工放射性核種」が地面に沈着したり、半減期の短い放射性核種(半減期8日のヨウ素131)などが次第に消えていったからである。

 そもそも空間線量を比較することは、外部被曝の量を比較していることになる。しかし問題にしなければならないのは、外部被曝に比べて、内部被曝の方が危険という点である。地面に沈着した「人工放射性核種」のセシウム134やセシウム137が植物・動物で生物濃縮され、それを人間が食べて内部被曝することを注意しなければならない。従って、「自然放射性核種」由来だけの空間線量と、「人工放射性核種」由来が含まれた空間線量を比較することは適切ではない。「人工放射性核種」による土壌汚染・海洋汚染を注意しなければならない。

参考

放射性物質の人体への移行経路
陸圏及び水圏における移行経路(食物連鎖)
出典:放射性物質の人体までの移行経路 (09-01-03-01) – ATOMICA -

海洋における放射性物質の移行経路
出典:放射性核種の生物濃縮 (09-01-04-02) – ATOMICA -

参考:人工放射線(能) (09-01-01-03) – ATOMICA -

追記 2011-09-05

 放射性核種の滞留(濃縮)について、より正確な記述があったので、引用する。

 40K(カリウム40)は食品中に含まれている天然の放射性核種の中でも最も多い。食物を通して人体に摂取されたカリウムは生理的に調整されていて、つねに一定の濃度に保たれているので40Kの体内量も一定である。

 環境中の人工放射性核種の中で重要ものは131I(ヨウ素131)、137Cs(セシウム137)、90Sr(ストロンチウム90)などである。これらはそれぞれの化学的性質によって甲状腺、血液や筋肉、骨などに集まる。

出典:人体中の放射能 (09-01-01-07) – ATOMICA -

 次に人工放射性核種が滞留(濃縮)される背景と、実際に食品の汚染状態に応じて、体内量も増える図を引用する。

 核実験等で地表に届いた137Csは食物連鎖を介して人体に摂取される。侵入した137Csが人体内にとどまる時間を生物学的半減期で表すと、日本人成人男子では平均およそ90日であり比較的短い。体内量の推移は排泄量と摂取量との差で決まる。排泄量は生物学的半減期と体内量で決まり、生物学的半減期は摂取量と比較すると安定しているので、体内量の推移は摂取食品の汚染状態の推移に類似した経時変化を示す。

セシウム137の牛乳中の濃度と人体内濃度(ストックホルム、スウェーデン)
出典:フォールアウトからの人体内セシウム(40年の歴史) (09-01-04-11) – ATOMICA -



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3 Comments

  1. 読売新聞(2011.10.5)でバナナに40K起因の放射能が109 Bqあると言う記事があり、調べてウソでないことが分かり、同時に人体も4000Bqの放射能持ちであることまで分かりました。
    貴方の見解とも一致し、味方を得た思いで、勇気づけられました。
    更に知りたい一件有ります。
    化学便覧では、40Kの方が、137Csより放射線(γ線、β線共に)はエネルギーが2倍強いのです。地球上の生物は誕生以来40Kに耐えてきたのですから、Csにはより耐性があると見たいのですが、正しいでしょうか。

    • 岡村様、コメントありがとうございます。
      どうですかね….。
      いろいろ考えてみたのですが、やはりよく分かりません。
      ごめんなさい。

  2. カリウムとセシウムの内部被曝の問題ですが、

    食品中のセシウムによる内部被ばくについて考えるために
    http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/CsInBody.html#4

    こちらで詳しく線エネルギー付与の計算が出ています。
    この方の結論は、
    放射性カリウムと放射性セシウムが体内に定常的に存在する場合、ベクレルで測った量が等しければ、体に与える影響も大ざっぱには等しいとというのが結論である。

    私の考えは、カリウムは全身に均等に存在して、人体は被曝しても細胞修復で復活できるが、セシウムはバンダジェフスキーの解剖調査で明らかになったように、臓器に濃縮して被曝が集中して、病気を起こすのではないか?ということです。

    管理人さん、色々な情報を使わせて下さい、よろしくお願いします。

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